婚姻費用
夫婦の間には、相互に扶助義務があります。その形は、経済的扶助や生活補助的扶助など様々な要素があります。
仮に、夫婦が別居した場合、収入の多い方が少ない方に経済的扶助をする義務が生じます。子供を引き取った側にはその負担も考慮され、他方側においては生活補助的扶助が履行されない分減額されることになりますが、これらの紛争を速やかに解決するために、過去の統計をもとにした、子供の数と夫婦の経済的収入のみを基準とした算定基準によって、決められるようになっています。よほどの特別の事情が認められない限り、これを外れて決定されることはありません。なお、権利者が不貞行為による有責配偶者である場合、配偶者の生活費相当分は除外され子供の養育費部分に限定されるという判例が出て以来、これに従う例が増えています。
婚姻が終了すれば義務は生じません。養育費に変わります。
支払い義務の発生時期は、実務上、申立後というのが、多くの取り扱いですが(現在の福岡家庭裁判所の取り扱い、例外として、内容証明郵便で請求したことを証明したときはその時から、但しメールによる請求は認めていません)、大審院判例(大判明34.10.3・同37.7.18・同昭13.6.30)は請求時まで遡ってできるとされていたものであり、最高裁判所も、家庭裁判所が婚姻費用の分担額を決定するに当たり、過去に遡って、その額を形成決定することが許されない理由はない、としたものもあります(最高裁判所大法廷昭和37年(ク)第243号事件昭昭和40年6月30日判決)。
その支払い義務発生の具体的時期については、要扶養時から認められるという学説もありますが、実務上は、家裁の審判でも、要扶養時以後、請求時以後そして調停審判申立以後しか認めないもの等に分かれていました。
時効について、扶養債権を、定期給付債権として、請求可能な時から時効にかかるという考えもあり、5年以内という限定も考えられます(援用を条件とする)。
養育費
夫婦が離婚し、子供がいる場合に、子供を引き取った方に相手方が支払う義務を負うものですが、子供の権利であって、親の権利ではないので、親どうしで権利放棄しても、効力が認められません。
この金額の算出も、婚姻費用と同じような算定基準によって決められます。婚姻費用における夫婦間の扶助義務を免れる分、比較的安くなります。
状況の変化により、その増減を、家庭裁判所に申し立てることが出来ます。ただ、1、2年のような短いスパンでは、よほどのことがない限り、認められることが無いようですし、合理的理由がないのに、収入減の職場に変わった場合などは、この減額分を評価しないという先例もあります。
支払い義務の発生時期は、別居後からというのが、最高裁判所の判例です(最高裁判所第1小法廷平成7年(オ)第1933号離婚等請求事件平成9年4月10日判決)。これについても、時効の問題が議論されるところです。注意すべきは、判決や調停調書で決められていれば、消滅時効は10年ですが、協議書や公正証書で定めた場合ほ、消滅時効は5年です。
面会交流
夫婦が離婚し、子供の親権者が決められても、相手方には、子供と面会する権利があります。親の権利というより、子の福祉の為です。従って、DV歴等の子供の福祉に反するような状況があれば、認められないこともあります。また、子供が一定の年齢以上の場合、その意思が尊重されます。
裁判所で具体的な条件を定めた面会交流権が認められた場合、合理的な理由がなく、これを拒否した場合、間接強制により、その権利が確保されます。但し、条件が具体的に定められていない場合には、間接強制も認められません(最高裁判所第1小法廷平成25年(許)第48号間接強制に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件平成25年3月28日決定)。しかし、最近は直接強制を認める例も増えており、直接強制の手続きを定める法改正の動きもあります。もっとも、各強制は夫婦(ないし夫婦であったもの)の間の問題であり、一定の年齢以上の子供の場合には、親の意思や行動に関わらず、子供の意思が最優先されるので、親に対する強制の問題は起きません(最高裁判所第3小法廷平成30年(許)第13号間接強制に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件同31年4月26日決定)。
以上オフィシャルHPから引用