令和4年3月25日、東京地裁で、親権を持つ父親から二人の子供を連れて別居したのは違法だとして、母親である元妻と助言をした弁護士に、損害賠償を命じる判決が下されました(朝日新聞DIGITAL3.30)。
本件は、家裁ではなく地裁であり、上級審で維持されるかは不明ですが、家裁においても、親権者が決まっている場合には、よほどの事情の立証がない限り、親権者の地位は保護されています。
従って、同事件の元妻側が主張している通り、仮に父親から子供等に対する精神的虐待があった等の場合に、弁護士が検討すべき救済策としては、家庭裁判所に子の親権者変更の申立てをし、裁判所調査官による、子の環境や意思の調査を求めて、対応するのが常套手段です。
仮に緊急を要する場合には、児相に相談するのが適切です。
ここで、注意すべきは、夫婦間において、妻が、子供を連れて別居に至った場合とは事情が異なると言うことです。その場合には、親権は父母共にあり、一方的な親権侵害には該当せず、むしろ従来から主に監護してきた妻が子を連れて行くのは当然のことと評価され、先例もこれを連れ去りとして評価しないと明言しています。ただ、主に監護をしてこなかった父親が、子供を連れて別居する場合には、連れ去りと評価される場合が多く、その場合には、母親が、速やかに、家庭裁判所に子の監護者の指定及び引渡しを求めると、概ね、子の引渡しを命じる処分を受けることが出来ます。
夫婦間で、別居前に、離婚協議が進行している場合などは、混乱を避けるために、別居をする前に、子の監護者の指定を、裁判所に求める方法をとることも一つの方法です。