潜在的稼働能力とは、婚姻費用や養育費を算定する場合に双方当事者の収入(と子供の数や年齢)を基に算定する場合に、実際に働いていない場合(収入証明が為されない場合を含む)に、これを収入0とはせずに、働いていれば得られるであろう認定収入を表します。通常、同年齢男女別の平均収入(キャリア等)又は短時間労働者の男女別年齢別平均収入(主婦等パート相当)でもって認定する収入とするものです。
家庭裁判所の調停や審判等においては、短時間労働者の男女別年齢別平均収入(賃金センサス)等を用い、婚姻費用においては、乳幼児等を抱える等働けない事情がある場合にのみ収入0とされることが、比較的多く認められました。別居に伴い、敢えて仕事を辞めて、高額あるいは低額に抑えようとする操作に対抗する行為に対処する方法でした。
これに対し、高等裁判所は、潜在的稼働能力に基づき収入の認定をすることが許されるのは、就労が制限される客観的、合理的事情がないのに主観的事情によって本来の稼働能力を発揮せず、公平に反すると評価される場合に限るという基準を用いています(令和4年2月4日東京高裁決定、令和3年4月21日東京高裁決定、平成30年4月20日東京高裁決定、平成28年1月19日東京高裁決定、平成20年10月8日大阪高裁決定等)。
安易に、潜在的稼働能力を用いてはいけないということですが、事実上の立証責任は、合理的理由により働けないという側にあり、弊害はないと思われますが、失業や就職経験がない(専業主婦)というような場合に問題になると思慮します。