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2023.12.15更新

現在、家庭裁判所では、財産分与において、退職金は、基準日(通常別居時)において、任意に退職した場合の退職金の額(会社から証明書の発行を受けたり、就業規則等で証明)を、勤務期間と同居期間で按分し、同居期間部分に相応する金額を、夫婦共有財産部分として財産分与の対象とするのが通例となっています。退職金は給与の後払いという性格に基づくものです。

その基準日を別居日とすることについて、必ずしも実質的な破綻の時期とは同じではないと認められる微妙な事案について、判示した判例があります。東京家庭裁判所平成21年(家)第8229号同8230号財産分与申立事件、請求すべき按分割合に関する処分申立事件平成22年6月23日判決の事案において、夫は、同居中に妻が夫相手に離婚調停や離婚訴訟を提起した時には、夫婦関係が破綻して相互扶助関係が途絶えていたので、同時期が基準日であると主張したのに対し、同裁判所は、あくまで夫が家を出た別居時が基準日であるとしました。この考え方は、所謂離婚原因足る婚姻関係の破綻の原因認定時期と、財産分与の基準日が必ずしも一致しないことを示しています。理由は、不仲になった時期もあったものの、それぞれの役目を果たし、夫婦共同財産の維持をしてきたものということが出来るというものです。

破綻の認定は、あくまで、意思の喪失を含めて客観的な証拠や経験則によりかつ信義則的要因を含めて判断されるますので、単に家庭内別居を主張しても、それ自体で破綻原因としての別居とは認められませんが、調停や訴訟を提起したという客観的事実があれば、同時点で婚姻関係は破綻していると認めることも不合理ではないので、同裁判所の判断は、破綻の認定時期(人的物的相互扶助関係喪失時)と、財産分与の基準日(物的扶助関係喪失時)は、必ずしも同一ではないと考えたという側面を有しています。

上級審の判断も見たかったのですが、上級審の判例が見当たらないので、確定したのかなと思慮されます。

投稿者: 武末法律特許事務所

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